猫の歴史

猫の基礎知識

さて、私たち猫が人間と一緒に暮らすようになったのは、これはもう本当に遠い昔のことですから、正確なところは定かではありません。
ただ、歴史的な記録や遺跡の発掘調査などから、一般的には今からおよそ4,000年から6,000年前の古代エジプト時代が起源だと考えられています。気の遠くなるような昔の話ですね。

もともとは、犬や猫などの哺乳類の先祖とされる「ミキアス」と呼ばれる豹のような大きな動物が起源で、その中から、そこからネコ類の祖先とされる「リビアヤマネコ」が出現して、だんだん人間に慣れて家畜化されていったのがイエネコの始まりとされています。
とはいえ、“家畜化”といっても、私たち猫は決して人間に完全に従属していたわけではありません。
そもそも、古代エジプトにおいて私たちは、単なる“飼われる動物”ではなく、ネズミから穀物を守り、毒蛇を退治するという非常に重要な役割を果たしていました。そのため、エジプトの人々からは感謝と敬意を込めて、なんと神様として崇められていたのです。

中でも有名なのが、頭が猫で体が人間という姿をした「バステト」という女神。豊穣や家庭の守護を司る神として信仰され、多くの神殿や彫像が残されています。
私たち猫が、時折どこか高貴で気品ある雰囲気を醸し出してしまうのは、おそらくその名残でしょうね。だって、かつては本当に神だったのですから。

さらに、当時のエジプトでは、猫の命を奪った者には“死刑”という非常に重い罰が科されていたとも伝えられています。人間の命よりも大切にされていた、なんて記録もあるくらいです。
まぁ、私からすると、それくらい当然の罰だと思いますね(笑)

その後、私たち猫は貿易船に乗せられて世界中へと広がっていきました。
人間たちは、長い航海の間、船にネズミが出て食料や物資が荒らされないようにと、猫を“対ネズミ用戦力”として重宝したのです。私たちとしても、食料はあるし、働く環境は面白いしで、案外悪くない仕事でした。そして、世界のさまざまな地域に到達した私たちは、その土地の気候や暮らしに合わせて少しずつ姿や性格を変え、現在見られるような多種多様な猫たちへと分かれていったのです。

日本にやってきたのは、飛鳥時代から奈良時代にかけてのことと考えられています。仏教と一緒に中国から伝えられたという説が有力ですが、これもまた諸説あります。いずれにせよ、仏典や大切な書物をネズミから守る役割として、私たちはしっかり期待に応えていたのです。

そしてその後、日本では鎖国の時代を経て、海外からの猫の流入がほとんど途絶えることになります。その結果、日本独自の環境で生まれ育った私たちは「和猫」と呼ばれる、日本ならではの風貌と性格を持つ猫として進化していきました。

日本には、私たち猫にまつわる伝説や民話もたくさん残されています。
その中には、老いた猫が若い娘を食い殺してその姿に化ける「化け猫」だとか、「猫又」だとか、ちょっと穏やかじゃない話もありますね。呪いや祟りの対象にされたこともありますが……もちろん、そんな話はすべて人間の創作です。現実の私たちは、そんな野蛮なことしませんよ。

神様として敬われたり、妖怪として恐れられたり──人間は勝手に私たち猫にいろいろなイメージを重ねてきました。
でもそれは裏を返せば、私たちの存在がそれだけ神秘的で、深い魅力を放っている証拠なのかもしれませんね。